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2009.09.01 Tue
絵の権利は
「読書とジャンプ」のむらきかずはさんにあります。


私に権利がありませんので、よろしくお願いします。

塗り絵をなさった浅野 ハコさんと鉛筆絵を描かれたむらきかずはさんにはタイトルを入れるお願いをして、了承を頂いてあります。お二人に感謝です。

それから、続きを読む以降は私の書いた話です。
銀魂の世界観を基にしておりますが、公式なものではまったくないので、覚悟を決めてどうぞ。

見てのとおり、銀八先生とお妙さんが出てきます。
男女の組み合わせが嫌な方、特定の思い入れをお持ちの方は止めておいたほうが無難です。

初めに書いたのがお妙さん側からなので、銀八先生を後に持ってきていますが、どちらからでもどうぞ。
お妙さん側を読みたい方はこちらからどうぞ。

楽しんでいただければ幸いです。


ある一日   <銀八>

のんびりした夏休みの空気を味わうのももう少しだと、銀八は思う。
後数日で新学期が始まる。とたんに校内は騒がしくなって、色のついたような日常が始まる。
学生のころには夏休み中の教師なんて遊んでいるものかと思ったが、結構忙しいことに自分が教師になってみて初めて分かった。
新学期の準備も忙しいが、問題を休み中に起こした生徒への対策だの繁華街での巡回だの、クラブを受け持ってるヤツはクラブ活動、職員室での当番…。新学期になれば三年生の担任なのだから尚更忙しくなる。
卒業後に進む道の入り口を奴らが探す姿を見つめなければいけない。普通の高校なら三年になってやることじゃない。高三に宿題まで出すのだ、のんびりした学校だ。
進む道なんて一緒に探すつもりはなかった。ああいうもんは自分で探すもんだと銀八は思っていた。

昼食のカップラーメンを食べながら、同僚の全蔵と繁華街巡回で見つけた店の話に花を咲かせていたが、眠くなってきた頭を休めてやろうと昼寝に向かうことにした。
「一服してくらー。」
片手をあげて銀八が不意に言うと、
「おぅ。」
とだけ答えて、全蔵はジャンプを読み始めた。
「何度目だお前」と問いただそうとして、やめた。
ジャンプは何度読んでも面白い。

誰もいない廊下は水族館のように静かでひんやりとしている。埃っぽい空気の中で、ペタンぺタンという自分の安物のサンダルの足音だけが響いている。
この雰囲気も悪かねえな。
蝉の声すら秋が近いことを知らせていた。

屋上のドアを開けると、青空が広がっていた。白い雲がまだ夏であることの象徴のようで、書割りのようだと思う。野球部の掛け声やら球を打つ音がする。
時々吹く風にもまだ湿気が残り、ゆるみきった夏の午後を感じた。
置きっぱなしにしてある灰皿を近くに寄せ、タバコに火をつける。
コンクリートの上に直に座り、煙を吐きながら壁に寄りかかると、暑さがシャツ越しに染みた。

半年もすれば奴らはいなくなる。

「せいせいする。」

独り言をつぶやいてみて、自分が感傷的になっていることに気がついた。
多分、静かすぎるせいだ。まあ、それも後数日。
思考を風に流し、タバコの火を消し、目をつむる。


ぎいっと屋上の重いドアをあける音がした。
物好きにも自分と同じで、くそ暑い屋上に上がってくるやつがいたかと、目をつむったそのままの姿勢でぼんやり思う。
タバコでも吸いにきたんなら、自分の姿を見れば帰るはずだ。

「銀八先生、溶けちゃいますよ。」

声で、分かった。

時々ここでサボっている銀八を、神楽やおりょうと探しに来ていたっけ。こいつは、俺がサボる場所が不思議と分かるようだ。
顔を思い浮かべながら声の主を見ると、志村妙が笑っていた。

「溶けやしねえよ、こんくらいで。」
まあ、脳みそはもう溶けて跡形もないがな。
どうしてこいつがここにいるんだと考えながら、何も考えていないふりをして大あくびをする。首をならすとごきごきといい音がして、肩でもこっているかのようだ。
「お前、何で居んだよ。新学期が始まってたなんてオチじゃねえだろうな、オレだけが忘れてたなんてことねえだろうな。」
本当にそうなら、なかなか笑える事態だ。

「まだ八月ですよ、先生。新学期まで…」
妙は指を折りながら数えている。

あと何日かなんて、とうに知っている。

「どうでもいいよ、あと何日かなんて。お前らが出てくれば始まんだろ。」
知っていることが知られたくなくて、投げやりに答えた。
そんな自分を楽しそうに見る妙と目があった。
「傘、返しに来たんです。」
そう言って、古い折り畳み傘を差し出した。

「あー、あれね。お前わざわざもって来てくれたのか、こんなもん新学期でもよかったのによー。」
数日前の登校日、にわか雨のせいで放課後に雨宿りをしていた妙とおりょうに傘を貸したのだ。自分にとっては恩師からもらった大事な古傘だが、黒い色も褪せていて骨も折れ、女の子に貸すにはどうかと思った。それでもないよりはましだろうと手渡したのだ。
こんな炎天下に返しに来るとは。
「かえって悪いことしたな。」と口の中で言葉にした。

「先生、お礼といっては何ですけど…」
妙はまだ楽しそうで、布包みをどことなくわくわくした顔で取り出した。
「もう、お昼食べちゃいましたか?私、作ってきたんですけど。」
たたみかけるような早口。彼女の緊張が耳から伝わって、銀八は戸惑う。
「あん?」
どう言っていいか分からねえな、こういう時。
「お前、わざわざそんなことしなくても。」
次の言葉を考えている間に、妙は包みをあけ、持ってきたプラスチック容器も急いで開け、銀八の手にむりやり箸を握らせた。

「卵焼きですぅ。うまく焼けたでしょ?」
妙の持ってきた容器の中にはやばいほど黒いブツが入っていた。
やべえ、ダークマターだ。どうやって断ろう。
病院送りになったヤツもいる危険な物体。クラスの連中なら誰でも知っている、最終兵器にして最凶兵器。

「先生食べてください。」
にこやかな妙の笑顔が恐ろしい。
「お、俺は、さっきメシ、」
断ろうとした瞬間に妙の手がさっと動き、箸を取り上げられ黒いブツを口に入れられた。

「うごごっ。」
衝撃に何も言えねえ。何もできねえ。なんちゅう破壊力。
必死になって口を手で押さえようとするが、妙はなおもブツを放り込む。
死、死ぬ…。川が見える…誰かが向こうに…。
HPが0になる前に力を振り絞り、なんとかして魔の手から逃れた。

「たんま、たんま、たんま。先生、食べるとも食べないとも言ってないじゃん。人の口に凶器放り込むなんて犯罪だよ、犯罪ー。」
やべえ、のどがやられた。声が変だ。
「凶器?耳がおかしくなったのかしら。卵焼きですよ、先生。」
顔は笑っているが、目は笑っていない。声が恐ろしい。
目をやられたのか、妖気が立ちのぼっているのが見える。
「いやいやいやいや。だから、ね。水分がないと食べ物ってのどに通らないじゃん?夏だしね、先生、今起きたばっかだしね。」
しどろもどろになっているのは分かっているが、必死になって言い訳する。
正直、ブツよりも妙の怒りのほうが恐ろしい。

「先生、よく冷えた麦茶ならありますよ。」
にっこり笑って水筒を出す妙が、ラスボスに見えた。

「あ」
思考停止。これ以上は何と言っていいか分からねえ。
「しょうがねえなあ。」
腹を決めて、箸を手に取る。
明日は家にいることになるだろうな、それともその前に救急車かなと覚悟する。

ダークマターはダークマターらしく、食べ物の範疇を超えていて、のどに刺さるとか突き破るとかそんなもんじゃねえ。麦茶で流し込む銀八の姿をニコニコしながらラスボスが見ていて逃げ場がない。レフェリーストップをかけてくれそうなやつも現れない。
腹の中に納まったのが奇跡みたいなもんだ。
流し込んだ麦茶で腹がガポガポいってる。

「先生、味どうでした?」
「ええっと、ああ、まあ、なんつーか、個性的な味付けだな。」
味とかってレベルじゃないが、正直な感想を言えば血を見るのは明らかだ。
妙は困る銀八を見てにこにこしている。

妙の行動の裏側にある思いは、なんとなく伝わっていた。だてに年食っちゃいない。和やかなこの雰囲気にもっと浸っていたいと思う。
「自分の立場」といういかにもな言葉が、頭の中に浮かぶ。
未練と雰囲気を断ち切るために、タバコに火をつけた。

「用が済んだなら早く帰れ。宿題、終わってねーんだろ?」
うまい言い方が他に浮かばない。うまい態度もよく分からねー、経験値が無さ過ぎる。
煙を吐きながら、傷つけてないかと妙の顔をちらっと横目で見る。
「あら、私はもう終わりました。新ちゃんはまだみたいだけど。」
妙は弟の新八を思い浮かべたらしく、くすくすと笑った。
「なら、手伝ってやれよ。」
笑い声にほっとしながら銀八はそう言うと、吸いかけのタバコを灰皿に押し付けた。そして、ぐぐっと背伸びをして立ち上がる。
終了の合図のつもりだった。

「ほら、行くぞ。」
座ったままの妙に声をかけると、
「もう行くんですか?もっとゆっくりしていたらいいのに。」
うらめしそうに俺を見て言う。
片づけをしている妙を視線からはずして、夏の名残りの風を肌に受ける。
「お前の来る前からいたからな。それに生徒と二人きりじゃ、いろいろうるせーからな。」
手を置いたドアの咎める様な熱さが気にかかる。

ゆっくりしてたら踏ん切りがつかなくなる。

動きたくないのは、多分暑さのせいだ。

「先生。夏が終わったら、きっとあっというまに卒業ですね。」

声にふりむくと、太陽を背景にして妙が笑っていた。ポニーテールが風になびいた。
若いなあ、まだ高校生なんだな、こいつ。
日差しのせいにして目を細める。
「ああ」
自分の18才を思い出して、つぶやいた。

妙が帰り、ひとり職員室に入る。
全蔵に「志村妙に会った」かと訊かれ、「ああ」と生返事をして椅子の上で目を閉じた。

多分、あいつにとっちゃ時が過ぎれば忘れてしまう一日。
高校生活の、ただの一日。

俺にとっては…。

考えが浮かぶ前に、ジャンプを読むことにした。



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