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2009.09.01 Tue
絵の権利は
「読書とジャンプ」のむらきかずはさんにあります。


私に権利がありませんので、よろしくお願いします。

塗り絵をなさった浅野 ハコさんと鉛筆絵を描かれたむらきかずはさんにはタイトルを入れるお願いをして、了承を頂いてあります。お二人に感謝です。

それから、続きを読む以降は私の書いた話です。
銀魂の世界観を基にしておりますが、公式なものではまったくないので、覚悟を決めてどうぞ。

見てのとおり、銀八先生とお妙さんが出てきます。
男女の組み合わせが嫌な方、特定の思い入れをお持ちの方は止めておいたほうが無難です。

初めに書いたのがお妙さん側からなので、お妙さんを先に持ってきていますが、どちらからでもどうぞ。
銀八先生側を読みたい方はこちらからどうぞ。

楽しんでいただければ幸いです。


ある一日    <妙>


もう八月も数日で終わりだというのに、空はこれでもかというほど真っ青で夏が終わる気がしない。
濃く黒い影は短くて、通りの木々も日陰の安らぎを与えてはくれなかった。
数日前の登校日にはにぎやかだった学校へ行く道のりも、今は人影もなくて蝉の声だけが背中を押している。
時々、カキーンと金属バットでボールを打つ音がして、妙はこの間の野球の試合を思い出した。

もう、夏も終わり。
高校生で過ごす、夏も終わり。
留年することなんて考えてはいないけれど、高校生活をもう一度はじめからやり直してみたい気分だった。


学校の廊下には人気がなくて静まり返っていて、それだけでひんやりとしている。静けさのために職員室に行くまでのひと足ごとに緊張が高まっていくのを感じる。
頭の中で考えてきた初めの一言を、その後に続くであろう会話をシュミレートする。そうでもして頭を何かで一杯にしないと、前へ進むことができない。

私らしくないな。

弟からは絶対的に信頼され、周り中から姐御と呼ばれ、近所でもクラスでもしっかりしている「妙ちゃん」と評判で、姉弟二人でもあの子なら大丈夫と親戚にも言われ。多分、だれもこんな弱気な私を想像しない。
自分を弱気にしている原因がいるであろう職員室の前で、深呼吸をひとつして、妙はドアに手をかける。

手が震えてる。
笑顔、笑顔。

「失礼しまーす。銀八先生、傘返しに来ました。」
できる限りの笑顔と優しい声で武装してドアを開けたのに、相手になる銀色の髪の毛の姿は机になかった。

机で昼寝でもしていると思ったのに。
高まりきった緊張がほどけていくのを感じた。

「銀八ならいねえよ。昼飯食べてたから、居眠りにでも行ったんじゃねえか。」
机の向こうにいた全蔵先生が、ジャンプを読みながらのんびりと答えた。
礼を言って、妙はため息をつきながら職員室を出た。


銀八が昼寝しそうな場所はいくつか知っているが、食事の後でのんびり一服となると…ひとつしかない。ちょっと暑いけど、いつもいる場所だ。ここのところの気温を考えると、普通ならあんな場所に行かない。でも、だからこそさぼるのにもってこいだ。

さっきまでの緊張感はもうなくなっている。
長々と階段をのぼる足取りも軽い。
屋上の扉を触ると夏休みの熱を帯びていた。

ぎいっと重いドアを開け数少ない日陰に目をやると、地べたに座り込み背中を壁にもたれかける、見慣れた銀色の頭が見えた。
国語の教師なのによれた白衣で、猫っ毛でくせっ毛のふわふわとした銀髪が風になびき、髪の中へ太陽が時折流れ込んでキラキラして、大きなかき氷かわたあめみたいだ。

「銀八先生、溶けちゃいますよ。」
昨日から考えてた言葉は、まだぴったりじゃない。

銀色の頭がゆっくりと動いてこちらを向き、眠そうな目と視線があった。
目が、離せない。

「溶けやしねえよ、こんくらいで。」

ぼそりと眠そうな声。
その声で、心臓が音をたてる。

先生は、大あくびをして首の骨をごきごきならした。
ふうっと聞こえないように吐いた息で、自分が息を止めていたことを知った。

「お前、何で居んだよ。新学期が始まってたなんてオチじゃねえだろうな、オレだけが忘れてたなんてことねえだろうな。」

いつもと変わらない軽い口調に妙はほっとした。

「まだ八月ですよ、先生。新学期まで…」
あと何日かなんて毎日数えているから知っているのに、知らないフリをする。
指を折っていると、
「どうでもいいよ、あと何日かなんて。お前らが出てくれば始まんだろ。」
投げやりな台詞に思わず笑ってしまう。

「傘、返しに来たんです。」

数日前の登校日、にわか雨に困っている妙とおりょうに銀八が傘を貸してくれた。黒い折りたたみの傘は、骨が折れていてさすとたわんで、妙とおりょうは笑いながら銀八に感謝したのだった。

「あー、あれね。お前わざわざもって来てくれたのか、こんなもん新学期でもよかったのによー。」
銀八は髪をがさがさとかきあげて、
「かえって悪いことしたな。」と口の中でつぶやいた。

妙はそれにも気がつかないフリをする。
「先生、お礼といっては何ですけど…」
そう言って、包みをとりだす。自分の手がまた震えているのを自覚する。
「もう、お昼食べちゃいましたか?私、作ってきたんですけど。」
「昼飯を食べていた」という全蔵の言葉を思い出す。
「あん?」
銀八がちょっとびっくりした様子でこっちを見た。

「お前、わざわざそんなことしなくても。」
それ以上言葉が続く前に、妙は持ってきたプラスチック容器を急いで開け、銀八の手にむりやり箸を握らせた。

「卵焼きですぅ。うまく焼けたでしょ?」
中には、自慢の卵焼きがいつものように真っ黒になっていた。

銀八の顔が固まって、手から箸が落ちそうだ。
「先生食べてください。」
「お、俺は、さっきメシ、」
銀八がおびえながら最後の言葉を言い終わるより早く、妙は銀八に渡した箸を取り上げ、卵焼きを銀八の口に入れた。

「うごごっ。」
突然のことに目を白黒して、口を押さえようとしている銀八の手を押しのけて、なおも口の中に入れた。
声にならない声を銀八があげて、妙の手から逃れた。

「たんま、たんま、たんま。先生、食べるとも食べないとも言ってないじゃん。人の口に凶器放り込むなんて犯罪だよ、犯罪ー。」
「凶器?耳がおかしくなったのかしら。卵焼きですよ、先生。」
声が座っているのが自分でもよく分かる。
「いやいやいやいや。だから、ね。水分がないと食べ物ってのどに通らないじゃん?夏だしね、先生、今起きたばっかだしね。」

慌てふためく銀八を見て予想通りだなと思う。
「先生、よく冷えた麦茶ならありますよ。」
すかさず用意していた言葉と水筒を出して、にっこり微笑んだ。

「あ」
言葉に詰まる銀八の手に水筒を渡すと、「しょうがねえなあ」とあきらめたように卵焼きを食べ始めた。

なんだかんだいっても、先生は優しいと思う。多少強引に勧めた点は否めないが、それだって突っぱねようと思えばできなくはないのに、先生はそうしない。
だから私はその優しさに付けこんで傘を借りたんだ。
それを、口実にしたんだ。

時間をかけて時々むせながら、先生は卵焼きを食べてくれた。

「先生、味どうでした?」
「ええっと、ああ、まあ、なんつーか、個性的な味付けだな。」
しどろもどろに答える銀八が自分より十も年上には見えなくて、妙は笑った。
笑っている妙を見て、ほっとしたように銀八はタバコを吸い始めた。

「用が済んだなら早く帰れ。宿題、終わってねーんだろ?」
力の抜けたそっけない言い方が先生らしい。
「あら、私はもう終わりました。新ちゃんはまだみたいだけど。」
弟の新八は朝から部屋にこもって「高三なのになんで宿題ー?」と叫びながら、宿題をしていた。

「なら、手伝ってやれよ。」
そう言いながら銀八はいくらも吸っていない吸いさしを、いつも屋上に置きっぱなしにしている灰皿で押し付けるようにして消した。
太陽を受けてぐぐっと背伸びをして立ち上がる。まるで大きな猫のようなその仕草が、なんだか懐かしかった。
登校日からは幾日もたっていないし、もう数日で新学期なのに。

「ほら、行くぞ。」
銀八に声をかけられて、妙は目が離せなかったことに気がついた。
「もう行くんですか?もっとゆっくりしていたらいいのに。」
片付けながらそうつぶやくと、
「お前の来る前からいたからな。それに生徒と二人きりじゃ、いろいろうるせーからな。」
階段室のドアの前に立ち、妙とはまったく違う方向を見たままぼそりとつぶやいた。
あきらめて勢いよく立ち上がる。
「先生。夏が終わったら、きっとあっというまに卒業ですね。」
大声で、飛び切りの笑顔を向けてみる。
銀八は太陽を背にした妙をまぶしそうに目を細めながら見て、
「ああ」
とだけつぶやいた。

先生にとっては、多分なんでもない一日。
でも、私にとっては特別な一日。

隣を歩きながら見た職員室までの道のりを、覚えていようと妙は思った。



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