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2010.06.19 Sat
絵の権利は
「読書とジャンプ」のむらきかずはさんにあります。


私に権利がありませんので、よろしくお願いします。


それから、続きを読む以降は私の書いた話です。
銀魂の世界観を基にしておりますが、公式なものではまったくないので、覚悟を決めてどうぞ。

今回の話は京都旅行に伴って作った本の為に、紙ベースで書いたので文章が読みにくいかもしれません。
銀魂らしからぬ恋の話をテーマで考えた、四つの話のうちの一つとなっております。

また、特定のカップリングがお好きな方、正統派のカップリングがお好きな方は止めておいたほうが無難です。
この話は、土方さんと銀さんがそれなりに、それなりなことになっています。
といってもその手の話のお好きな方にとっては、大したことしてないと思う程度です。
ただひたすら二人で飲み屋で張り合ってます。ぐだぐだです。


話の長さの関係上二つに区切ってあります。
こちらは<2>となっておりますので、先に<1>を読まれたほうが無難です。


では、楽しんでいただければ幸いです。

yahannotuki-vsvs.jpg

夜半の月 


                
<2>


二人とも最後は半分以上こぼすようにして杯を重ねた。床に飲ます酒なんてもったいなくて仕方ねえが、こいつに負けるくらいなら構わねえ。結局この店でも勝負はつかなかった。店の席を賭けたはずなのに、当の店を出ても勝負を続けてる馬鹿さ加減には途中から気が付いちゃいたが、意地になって飲み続けていた。
店が閉まるというので、今度は二人で路上で対決することにした。

深夜営業のコンビニからカップ酒をいくつも買って、ふらふらと飲みながら店を出た。
夜道をまっすぐ歩けないあいつを見てげらげら笑うと、電柱にぶつかった。そんな俺を見て、今度は奴が笑う。犬に吠えられたといっては笑い、その犬のうんこを踏みそうになってるといっては笑った。くだらねえことで互いを笑いながらよたよたと歩いて、自販機が店のように集まっている場所を見つけた。狭い入り口を中に入るとぐるりと自販機が囲んでいる。タバコも酒もジュースも、エロ本どころか大人のおもちゃにゴムまで並んで売ってるっつーのがかぶき町だ。
誰もいないその壁に寄りかかりながら、二人でカップ酒を開けた。

yahannotuki-smile.jpg

土方の頬は上気して、先刻よりも目の赤さは増していた。
きっちりしていた黒の着流しの襟元がずいぶんとはだけてきて、見ようによっちゃあ色っぺえんだろうな。片や俺だって、下に一枚着てるとはいえ片身を外して着てるんだから色っぽいはずだ。
へへっと奴は笑って「うめえ」と呟いた。
「ああ、うめーな」俺も笑って呟いた。酒を随分飲んだはずなのに、カップ酒を開ける瞬間はなんだか笑っちまう。こんな奴とでもうめぇんだから、大したもんだ。

「てめーれも一人で飲み歩くこともあるんだな、珍しい」
土方は銀時にそう指摘されると、ちょっと考えことでもするかのような間を空けて「屯所じゃ飲んれも落ち着いて酔えねえからな」と言い、酒に口をつけた。
「そうだな」
銀時も万事屋では酒を飲む気にはならなかった。まだ子供である新八や神楽の手前というよりも、酒を飲む場所という匂いがしない。日常生活の場であると同時に仕事の場でもありすぎて、落ち着かないのだ。万年暇をもてあましてる自分ですらそうなのだから、中々忙しい真選組のナンバーツーであり、揉め事を一手に引き受けていそうな土方にとっては尚のことだろう。
「ストーカーの上司らの、さぼってばかりのドSの隊長らのミントンばかりの監察らの、一癖あるやつばかりだからなあ」土方が後始末をしていそうな真選組の面々の顔が浮かんだ。
「おい、総悟や山崎はいいが、近藤さんを悪く言うのはよせ」
大した忠義心というかなんというか。本当に近藤は男にもてるよなあ。

「屯所じゃ落ちつかねえが、女のいる店じゃうるさくてかなわねえしな」
「おいおい、嫌味か、それ」銀さんに対する挑戦状か、それ。
「あん?何言ってんらお前、気楽に飲めねえって言ってんらよ。うるさくて酒の味が分からねえ」
「へー、うるさくてな、そうだよら、うるさくて酒の味、分かんねーよら」ああ、むかつく。「女いると寄ってくるもんなー、うるせえよら」ああ、ホントにむかつく。俺と違って、心底そう思ってるのが分かるのが、一番むかつく。酒でくらいは負けられねえと、ぐっと銀時は酒をあけた。

「中々いい飲みっぷりじゃねえか」土方はそう言って、新しい酒を銀時に手渡した。
「酒の肴までずらっと並んだ自販機で、飲んでる相手がお前だってのは気にくわれえが、たまにはいいもんらな」そう言って、土方はタバコに火をつけた。
「てめー、頭になんか沸いてんじゃねえのか。女にでも振られたんじゃねえのか、マヨがイヤだとか言われてよ」神妙に語るヤツが気持ち悪い。
「ああんっ?何言ってんら、なんで俺が女に振られるんだ。振られるのはお前だろ」
「んだとっ、いくら俺があんまりもてねえからと言っらってら、そうしょっちゅう振られてばかりじゃねえ。振ることらってあんらよ」
「そんなにしょっちゅう振られれんのか」かわいそうな子供でも見る目で土方は見ると、ため息をついた。「よっぽど、下手なんだなお前」そう呟いて、煙を吐いた。

「おい、誰が下手だって?銀さんのナニが下手だって?」
「お前だよ、白髪頭のお前が下手なんだろ。女にしょっちゅう振られるくらい、色々と下手なんだろ」あっさり言う土方へ腹が立つより前に、心が折れそうな気分になる。
いやいやいやいや、そんなことないって、銀さんソレが原因で振られたことなんてないって、多分。

「てめー、さっきから相当自信があるみてえじゃねえか」
「ふん、しょうがねえだろ、女の評価だ」
「おいいぃぃっ、ちょっと待て。俺だって評価されてるぞ、「銀さん素敵―」とか「銀さんってすっごいのね」とか言われてるぞ」ナニじゃないところでだけどな、言ってくれるのがガキばかりだけどな。
「へえ」薄ら笑いを土方は浮かべて、「くっついてるガキ以外にも、モテんのかお前。色町で評判は聞いたことねえがなあ」と、見透かすように言った。
「おいっ、えらそうにくっちゃべってるがおめーがもてるのなんら、金が絡んだ店ばかりらろ、金ばらまいてもててるんじゃねーの?ドンペリ何本もあけちゃってるから騒がれれ、それれもててる気分になっちゃってるだけらねーの?テクニックなんてねーんじゃねーの、本当は」
土方は黙ったまま酒をくくっとあけた。銀時をちらりと見て小馬鹿にしたような視線を走らせた。その様子がむかつく。
「さっきっから自分のこと上手いなんて抜かしてるがな、てめーのことをてめー自身で上手いなんていうヤツは大概上手かねーんだよ。やってみたら拍子抜けするほど下手糞だったりするんら、俺の方がぜってー」

じいっと黙って俺を見ていた土方が、ぐっと俺に近寄った。ヤローの返答を待って思わず身構えて後ろに下がると、自販機にすぐに背中が触れた。
どん、とヤツが俺の左耳の横に片手を突いた。気圧されて息をのむ。
ピーという電子音に遅れて、寄りかかった後ろの自販機からゴンと物の落ちる音が背中越しにする。
「じゃあ、試すか?」
俺の眼を見たまま低い声で呟くと、にやりと土方は口の端で笑った。
そのまま思考停止中の俺の横を掠めるようにして、土方は受け口から酒を取り出した。

足の下で吸っていた煙草を消し、安酒のふたを開けるとうれしそうに土方は口をつけた。銀時は不意打ちをくらっていた頭をなんとか働かすと、動揺した自分を隠すように土方から目をそらした。
「さっきから試す、試すって言ってるがな、女に二人で試して感想でも聞くって言うのかよ。俺はら、お前と義兄弟になる気なんざ、これっぱかしもねえからな」そう言って、酒を一口飲んで気分を落ち着ける。
「俺だってお前と義兄弟になるなんれごめんだ」土方の落ち着き払った態度にむかっ腹が立った。
「この時間じゃ、どの店も閉まってんだろ。どうやって試すんだか知らねえが、試しようがねえじゃねえか」辺りの店はもうとっくに閉まっていて、呼び込みすらもういない。夜に戻るより朝になるほうが早い時間だ。
「なくもねえな」土方はそう言って、自分の口から零れた酒を袂で拭った。
そのまま、また銀時に一足近づいた。

「簡単なことだ。お前にしてみりゃいいんだ」なんでもないことのように土方は告げた。
「ちょ、ちょっと待て。俺にするってどういうことだ、え?俺は男だぞ、女じゃねえぞ」
「当たり前だろ、お前みてえな女がいるか、馬鹿」
「おいおいおいおい、おめーそっちの気があったのか。そりゃあ、ヤローばかりん中で副長やってて飽きねえよな、天職だよな、天職っつーより天国だよなー」
「何言ってやがんら、安心しろ俺にもその気はねえ。野郎相手になんざ、勃った試しがねえ。」
「そうか、よかった。って、よくねーよ。おめーにそっちの気がねえなら、何でナニを試さなきゃならねえんだよ。男同士で!」嫌だからねー、銀さん絶対に嫌だからねー。最近ご無沙汰だっていったってさ、選ぶ権利くらいはあるからねー。

土方から逃れようと後ろに下がるが、周りをぐるりと自販機が取り囲んでいることに銀時は気が付いた。しまった、はめられた、いや、まだはめられてねーけどはめられた。
「一々、女みてえに大騒ぎする野郎だな。お前、女の前でもそうやってグダグダ抜かすのか」眉間に皺を寄せた、土方の落ち着き振りが怖え。
「ふざけんなよ、てめー。てめーは女じゃねーだろ。なんでしなきゃいけねーんだよって言ってんら」
「お前が俺より上手いなんて言うからだろ、だから比べてやるって言ってんだ」
一体なんなんだ、その感謝しろっていうような態度は。銀時は段々腹が立ってきて、土方の胸倉を掴むと力を入れて後ろへと押した。
「おい、ふざけんのもいい加減にしろよ。てめーより銀さんの方が色々上手いのは仕方ねえだろ。だからってな、野郎同士で比べるもんじゃねーって言ってんだよ。第一、てめー警察官だろ。こんなとこでナニ出してサカってたら、捕まえる側だろ」
土方は銀時に押されて半歩下がり、きょとんとした顔で銀時を見たあと、大声で笑った。

「相変わらず馬鹿らな、お前。当たり前えだろ、サカるわけなんざねえだろ。こんな町中で、なんでお前相手にサカるんら、お前こそその気があるんじゃねえのか」
座り込んでげらげらと笑い出す土方を見下ろして、銀時は心底ほっとした。よかったー、こんなところで貞操の危機かと思った。銀さん、開いちゃいけねー扉を開いちゃうかと思った。
「サカるんじゃねえよ」
ゆらりと土方は立ち上がるとそう言って、銀時にすうっと近寄った。
「んじゃ、なんらよ」近い、近い、近いーっ。銀時は土方の分厚い胸に腕を押しやってガードする。
「こう、するんだよ」
土方の顔が近づいてきて、銀時は悲鳴をあげた。

「ス、ストーップ。ちょい待て、ちょっと待て、永久に待てーっ。って、なんだサカるんじゃねえって、試すってコレかよっ」なんだアレじゃなくてコレかよ。って待て、これじゃあ、サカるのと大差ねえじゃねえかーっ。
「コレだったらお互いがどっちが上手いか、簡単に分かるじゃねえか」
「分かるじゃねえか、じゃねえーっ!」なんで野郎と口付けを交わさなきゃなんねんだーっ。サカらねえってったって、銀さんの大事なくちびる奪われちゃったら同じだろ、野郎相手に奪われちゃいけねえだろっ、どっちもーっ。
「自信がれえのか」
「自信ならある。だが、そういう問題じゃねえ」そうだ、そういう問題じゃねえ。
銀時がぐっと力を入れてもう一度押すが、土方は後ろへ下がらなかった。
「なあ、おい。よーく考えてみろ、おかしいだろ。この状況がおかしいらろ、どう考えてもおかしいらろ」やばい、土方の目がさっきよりもすわってる。朱を差したような目がぼんやりして、焦点があってないようだ。明らかに酔いすぎだ。

「ああ、確かにおかしいら」
土方がぼうっと考えている隙に、銀時は土方のすねを蹴飛ばした。だが、土方は首をわずかにかしげて眉間に皺を寄せるだけで、今度も後ろへは下がらなかった。
「おい、なんでケリいれんだよ。手前ぇ、勝負から逃げんのかよ」
「勝負から逃げるんじゃねえよ、てめーから逃げるんだよ」しまった酔い過ぎた。いつもなら華麗に決まるはずの銀さんのケリが決まらねー。いい酒だからってぐいぐい飲みすぎたー、調子に乗って飲みすぎたー。いい酒すぎていつもの酔い加減が掴めなかったー。
「俺から逃げようなんら、いい度胸じゃねえか」
「いい度胸に免じて、ここは許せって」ぐいっと硬い腹を押すがびくともしねえ。マヨラーのくせに相当腹筋鍛えてやがんな、こいつ。
銀時はなんとか土方から遠ざかろうと体を押すが、土方はなんとも無い様子で銀時の無駄な行動を見てへらへらと笑っていた。それでもぐっと力を入れて肩を押すと、土方の持っていたカップ酒が床に落ちて割れた。
「あーあ、勿体ねえなあ」
土方は揺れて零れて指に付いた酒を、旨そうにぺろりと一本ずつ舐めあげた。

「暴れてんじゃねえよ」そう言って、土方はくっくと咽喉で笑い、銀時を見た。
考えたら、こいつ途中から変だった。眉間に皺しかよせたことがねえようなこいつが、ずーっとへらへら笑ってやがる。どこかの店で飲んだ酒に、なんか悪いもん混じってたってことか。それで俺のケリがきまらねーってことか。
「俺、おめーより下手ってことでいいからさ、もう仕舞いにしようや。な、土方君。おめーだって野郎と接吻するだなんて冒険はしたかねーだろ。銀さんが、涙をのんで負けてやるからさ、な」ぽんぽんと土方の肩を叩く。土方の脇をすり抜けて逃げようとしたが、失敗した。
「冗談じゃねえ。わざわざ手前に負けてもらわなくったってら、俺の勝ちだって言ってんだよ」
「な、何をーっ。いやいやいや、いや。そう、おめーの勝ちだ。だからな、そこをどけって」
「やだね」
「『やだね』じゃねーだろっ、どけって言ってんだよっ」
「あんで、俺がろかなきゃなんねえんらよ」
俺より酔っているらしい土方は火事場の馬鹿力ならぬ酔っ払いの馬鹿力を出して、押しても押してもびくともしねえ。段々近寄ってくる顔がマジで怖え。

「あー、確か聞いたわ。おめーがもて遊んだ女の子がよ、俺に『土方さんの方が上手だった~』って言ってた。今、思い出した」
「嘘ぬかしてんじゃれえ」土方はどんと銀時の顔の横に両手をついた。
「誰が女もて遊んらって?俺が上手なのは知ってるんだって言ってんらろ、さっきっから」
土方の目から目をそらしたらやべえって分かってる。わんころの喧嘩と同じで、目ぇそらしたらその時が俺の貞操の危機だって分かってる。でも、あまりに近い土方の目を見ていると、訳が分からなくなりそうでもっとやばい気がする。
「おい、落ち着け、な。酔いすぎなんらよ、おめー。酔い醒めたら後悔するから、な」
そう言って、ヤローのがっしりとした両手首に手をかけて壁から手を離そうとするが動かねえ。それどころか眉間に皺をもっと寄せて、顔を近づけてきやがった。あー、酒くせー、煙草くせー。
「誰が、酔いすぎらって?」
くすくすと笑うと「酔いすぎなのはてめぇ、ら」そう言って銀時を見て「赤い顔してやがらあ」と、また笑った。
「そうだ、俺が酔いすぎだ。だから、離せって、な」言いながら、もう一度土方の両手に力を入れた。

「きかねえんだよ、てめぇなんざ」

しまったと思ったときは遅かった。土方の顔が近づいて、気がついたときには触れていた。抗議の声をあげようとした瞬間に、嫌な感触が口の中にして、俺の全身に鳥肌が立った。
「ん、んぐっ」
あー、苦え。スモーカーの女とのキスは甘いのに、野郎相手だとこうも苦く感じるもんなんだなあ。
新八―、神楽―。銀さんは開けちゃいけねー扉を開けられちゃったよー。あー、閉じてー、この扉。開く気なんてこれっぱかしもなかったのになー。

誇る様に口の中で我が物顔に動く舌を、噛み切ってやろうかとさえ思う。土方は自慢していただけあって、それなりに上手いのがまた腹が立つ。
歯の表や裏をなぞる様に探り、みじろぎもしない銀時の舌に誘うように絡む。口蓋の上や歯茎や舌を隅までをちろちろと這い回られると、寒気がした。自分と土方のたてる湿った音が耳に響き、酒の匂いと煙草の匂いが混ざって鼻に広がり、額には野郎の硬い髪が触れる感触があった。少し薄目を開けると、目を閉じて真剣な様子の野郎がまん前に居て、野郎の長い睫毛に現実だって事実を見せ付けられて胸糞悪い。
どう土方が頑張ったところで、女とするのとは違うのだ。
どうやっても気分がのらねーのは、相手がこいつだからっていうよりも男だからなー。これがなー、べっぴんじゃなくても女ならなー。俺のテクニック使って反撃する気にもならねえ。股間センサーはぴくりとも反応しねえ。

銀時は土方の襟を掴み、体勢を崩させながら自分の右足で相手のすねを蹴り転がした。行為に没頭しかかっていた土方は面白いように倒れて、地面に突っ伏した。
「てめー、調子に乗りすぎなんだよ」
銀時は土方を起こし、胸倉を掴んだ。土方の目は酔いすぎで焦点がさらにぼやけてとろんとしていた。
「おい」
「お前、下手っくそだなー。生娘じゃあるめえし、もうちょっと反応しろよ」にやにやと土方は笑い、「それとも童貞か?」と、銀時に真顔で訊ねた。
「お、おまえ、ふざけんな。このヤロー、サカりのついた犬じゃあるめえし、男女の見境なく誰にでもノリノリでできるわけねえだろっ」銀時が土方をぶん殴ると、土方はそのまま道路に倒れた。
地面に突っ伏した土方は、「う、う、ああ、気持ち悪りい」いきなり道端で盛大に戻し始めた。
「お、おまっ、なんだよ。なんで吐いてんだよ。それじゃあ、まるで銀さんが気持ち悪りいみてーじゃねえか」

なんだー、この敗北感。

土方は、大声をあげる銀時の顔をちらりと見ると、また吐いた。
あー、なんだっつーんだよ。なんだ、俺が気持ち悪いってか、俺が悪いってか。
「おいいいいっ、俺が気分悪りいんだよ。おめーがやらかしたことで傷ついてんのに、なんで俺が悪いみたいになってんだよ。おい、こら、ふざけてんじゃねーぞ。普段の銀さんはな、上手いんだよ。おめーが相手だから大人しくしてやったんだ、本当は暴れん坊将軍なんだよ、銀さんは」
「うるせー、ド下手くそ。マグロのくせに、がたがた抜かしてんじゃね、え、よ」
土方は手近にあったカップ酒の封を開け、消毒だと口をゆすいだあと、青い顔でまた吐いた。

「んだとっ、俺はなわざと大人しくしてたんだ、おめー相手じゃ銀さんのテクニックが勿体ねーから」
「ほざきやがれ、馬鹿。気持ち悪りいから、面こっちに向けるんじゃねえよ」
「ちくしょー、気持ち悪いのは俺だーっ!なんだかなー、なんでこんなに俺が一人で傷つかなきゃいけねーんだろーなー。俺なーんも悪いことしてねーのに」
「あー、すっげえ気分悪い。おい、こっち向くんじゃねぇ」土方は犬でも追い払うように、手を上げてしっしっと銀時を追い払った。
「てめー、いい加減にしろよ」
銀時が土方の胸倉を掴んで体を起こすと、土方は目だけへらへらと笑って「俺の勝ちだな」と告げた。
「ふざけんじゃねー」」銀時が土方の右頬を思い切り殴りつけると、土方はそのまま道路へと倒れた。それでも納得のいかない銀時がもう一発お見舞いしてやろうと土方へ近寄ると、目を開けた土方はぼうっとこちらを見上げた。

「…いい月だな」

それだけ言って、土方はそのまま目を閉じてすやすやと眠ってしまった。
もっと殴りつけてやりたいのに勝手に寝やがって、ちくしょーどうしてくれんだ。不貞寝してーのは、この俺だーっ。あー、誰か俺の記憶ごとコイツを抹消してくれーっ!
寝息を立てて気持ちよさそうな土方の、銀時に殴られて赤く腫れた頬をぎゅうっと力いっぱい爪で抓ってやる。それでも土方は目を覚まさなかった。
そのまま路上へ放り出しておこうかと思ったが、銀時は土方を眺めてちょっと考えてため息をひとつくと、仕方なしに土方を担いでタクシー乗り場へと歩き出した。

朝の色が染み出した空には、土方の言ったとおりの見事なお月さんがのぼっていた。
ふうっとゆっくりとため息をもう一度ついて、銀時はこの長い夜の終わりが早く来ることを祈って、月を仰ぎ見た。





了  
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