はじめによもやまペット本(小説やら漫画やら)銀魂色塗り自作の話HRK博物館や美術館寺社仏閣

ぱちぱちエリー



活動中のサークルHRKのHPです
HRKは通販もやっています。

--.--.-- --
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2010.06.12 Sat
絵の権利は
「読書とジャンプ」のむらきかずはさんにあります。


私に権利がありませんので、よろしくお願いします。

それから、続きを読む以降は私の書いた話です。
銀魂の世界観を基にしておりますが、公式なものではまったくないので、覚悟を決めてどうぞ。

今回の話は京都旅行に伴って作った本の為に、紙ベースで書いたので文章が読みにくいかもしれません。
武州時代と江戸での過去と現在が並列で書いてあります。
また銀魂らしからぬ恋の話をテーマで考えた、四つの話のうちの一つとなっております。

また、土方さんやミツバさんが絡んでくるので、純粋に銀魂を楽しんでいらっしゃる方や、
特定のカップリングがお好きな方、また色っぽい話が苦手な方は止めておいたほうが無難です。

話の長さの関係上三つに区切ってあります。
こちらは<2>となっておりますので、前を読まれる方は<1>へを、続きを読まれる方は<3>へをどうぞ


塗り絵をなさったのは、サクラバコのハコさんです。
ハコさんにはタイトルだけでなく中の挿絵も塗っていただきました。毎度毎度どうもありがとう♪



では、楽しんでいただければ幸いです。

kuyuru-toshi-haco.jpg
月を紫煙に燻らせて <2>


二日月     二

夕暮れ時の静かな時間、段々と夜へと向かうこの静かなひとときを、近藤さんの道場の縁側で過ごすのが好きだった。隣には誰もいないこともあったし、近藤さんと二人でくだらないムダ話をするのも楽しかった。道場で過ごした一日分の疲労は充実感として感じられて、それは近藤と出会うまでの土方が受けたことのない思いだった。
道場の騒がしさと縁側の静けさ。そのどちらもそのときの俺には必要なもので、一人でぶらついていた頃には味わえなかった時間を俺は楽しんでいた。
江戸へ行くという話を誰かが初めて口にしたとき、俺達はすぐにその言葉に熱を上げた。
若い頃なら誰もが抱くような平凡なままで終わることへの焦燥感と、功名心。当時、天人達と戦っている孤軍奮闘の若い侍達の話を聞いて、内心忸怩たる思いを抱えていた侍ではない俺達にとって、それはすべてを解消してくれる切り札のように思えた。
江戸へ行くということはあっという間に本決まりになり、江戸へ行ってどうやって生きていくのかということには、誰もあまり触れなかった。行けばなんとかなるという浅はかな無鉄砲さは、その頃からあんまり変わっちゃいねえ。

周りの人間たちは俺達の考えに賛同してくれた人もいたが、馬鹿な考えだと反対する人も数多くいた。両親や親戚を説得するのに苦労している連中をみて、鼻つまみもので止めるもののない俺は、気楽な身の上であることをむしろ喜んでいた。

沖田は、近藤さんが行くというなら地獄でもどこへでも参加を申し出ただろう。
まだ幼さが十二分に残るあいつがいくら手練れの剣客だといったって、連れて行くことには俺達もさすがに躊躇した。あいつには両親はいないもののたった一人の姉がいる。溺愛する姉をどうするのか考えたら、いくら総悟でもちっとは考える時間がいるんじゃねえかと俺は思ったのだが、あいつは「行く」と即答した。
近藤さんは、体の弱いあいつの姉が江戸で生活するのは耐えられないだろうと心配し、連れて行くのは無理だと総悟と話しあった。
彼女は、沖田家の遠い親戚に預けることになっていた。
その頃の江戸は殺伐として、今ほどお気楽じゃなかった。


もうこの縁側でのんびり過ごす時間がないのかと思うと、俺はちょっと寂しい気持ちになった。あと何度こうして過ごせるのだろうと考えると、夜の訪れと共に考えないようにしていた不安が足元から忍び寄ってくる気がした。それでも、俺は縁側で一息ついて、ぼんやりと遠くを眺めた。
暮れてゆく時間の向こうから、彼女が夕刻の一瞬を染め上げたような着物を着て現れた。そのまま言葉もなく、おずおずと俺の横にすこし離れて座った。俺も彼女も何も口にせずに、星がゆっくりと瞬き始めるのをただその場で眺めていた。

今にも沖田が現れそうで落ち着かず、少しして俺は席を立った。
「みんな江戸で一旗あげるって本当?」
意を決したように、彼女が俺の背中へ声をかけた。
「…誰からきいた」彼女には直前まで内緒にする算段だったはずだった。
「そーちゃんが…昨日意気揚々と」
「あのバカ」
江戸行きを即答したときの輝くように笑った沖田の顔が目に浮かんだ。そうっと後ろの様子を伺うと、薄闇の中で下を向いて、消え入りそうな声がした。
「…私も…連れてって」
息をのむほんのわずかの間のあと、ためらいがちに彼女は続けた。
「私は…そーちゃんの親代わりだもの。あの子には私がいないと…」夜の始まりを告げる風が吹き抜けて、辺りの木々がざわざわと落ち着かない音を立てる。
「それに…私…みんなの…」
それ以上は、聞いちゃいけねえ。分かっているのに、足がぴくりとも動かなかった。
聞いちゃいけねえって分かっているのに、俺は、その言葉がずっと聞きたかったんだ。
「十四郎さんの側にいたい」
闇に溶けるように小さく、でも意思を持ったまっすぐな声で彼女が告げた。
頭の中が真っ白で、俺の心臓が音を立てる。
「しらねーよ」
答えは聞く前から、すでに俺の中では決まっていた。
「知ったこっちゃねーんだよ、お前のことなんざ」
彼女同様、俺の声も震えていたかもしれない。頭の中がわんわんと音を立てて、地面がぐらぐら揺れているような気がする。

俺はいまどんな顔をしているんだろう。
なんでもないような顔をしなければいけねえと思いながら、背を向けてゆっくり前に向かって歩いた。背中越しに感じる空気がさざなみのように小さく震えている。何があっても振り返るわけにはいかなかった。張り詰めた糸を一足ごとに断ち切るように歩く、その足が重くてならねえ。足の下のなんでもないような砂利に足をとられそうになる。
もう一言だけ言葉を口にして彼女が俺を止めたらどうしよう、そうなったらどうするかまで考えたが、それ以上は彼女はなにも口にしなかった。俺は身勝手にもそれに安堵する一方で、彼女にとってはそれだけのことだったんだと思い込もうとした。
顔をわざと高く上げて前を向くと、いつの間にか月が出ていた。
まだ青い色をした夜空に、想いの欠片の様に消え入りそうな薄い二日月が、俺の目の前にのぼって俺を照らしていた。


次の朝、俺は女郎屋から朝帰りをした。
朝練習を終える頃合を見計らって道場に向かう足は自分で想像していた以上に重く、頭の中に鉛でも詰まってる見てぇにひどい二日酔いだった。女と飲んでいるときにはちっとも酔えなかったのに不思議なもんだと思いながら、まっすぐに歩けないほどのふらふらした足取りだった。道で何度かもどしながら道場へと与太者然として歩いていた俺は、まっとうな姿で勤めへと向かう人の姿を見て、心底自分が情けなくなった。

どうにか道場の井戸端へとたどり着くと、練習を終えた近藤さんがおあつらえ向きにいるのが見えた。
いつもみてぇに近藤さんがそこにいるように、俺が練習後に近藤さんや総悟と井戸端へ顔出すように、世話を焼くために彼女はすぐ近くにいるんじゃねえかと、俺は図っていた。
「今朝はやけに遅かったなトシ」近藤さんは笑顔で近寄ってくると、擦り切れた俺の黒の着流しに昨夜の痕跡を目ざとく見つけた。「ん?なんか付いてるぞ」
すまねえ近藤さん、利用させてくれ。何にも気が付かない近藤さんの笑顔に、胸がちくりと痛む。
「ああ、白粉だな。こりゃあ、参ったな。昨日の敵娼が激しかったからな」黒地に目立つ白粉の呆けたような白を指しながら、「近藤さん、他言はなしだぜ」と言うと、にやりと笑った。
「さすが色男だな。酒の匂いもするし、香の匂いもしてるぞ」
我ながらずいぶん下手な演技じみた台詞だが近藤さんはのってきた。俺の着物に鼻を近づけて大声で笑う。近藤さんに合わせてぎこちなく笑いながら、女郎部屋での話を長引かせ、俺の気はどんどんそぞろになった。
近藤さんの背中越しの藪に、途中から砂色の髪の毛と後姿が見えていた。
心臓が押しつぶされそうだ。吐き気がする。
「な、なかなかの、上玉だったぜ」
彼女の着物が、ゆらゆらと藪の中でざわついてる。
「一晩中楽しんだのに、帰るときまでしがみつかれてな」
耐えられずにわななくように薮の中へ消えた、彼女の着物の薄い桃色が俺の目に淡く残った。
硬く握り締めた拳に爪が食い込んで、血が出ているのが見えた。手を開こうとするが上手くいかねえ。
「どうしたトシ、そんなことお前が口にするのを俺は初めて聞いたぞ」近藤さんはいぶかしげに俺を見て、首をひねった。
俺の手は凍りついたように冷たく、小さく震えていた。

俺の望みどおりに、彼女は傷ついて立ち去って、あきらめてくれるだろう。俺といたって何もしてやれねえ。いいことなんざ、ひとつもねえ。今の俺には彼女を幸せにすることはおろか、護ることもできねえ。

俺にはなんにもねえ。
震える手に力を入れて、もう一度拳を強く握る。

「具合でも悪いのか。青い顔をしてるぞ、お前」
心配して俺を見上げる近藤さん。なにが起こったか多分気がつかねえ近藤さん、俺はもう先より前から決めてるんだ。
「近藤さん、俺はあんたについていくぜ。江戸で何があっても、何してもあんたが俺の大将だ」
ぽかんと口を開けて俺を見る近藤さんの間が抜けたように人のいい田舎者の面が、俺は好きだった。武州をあらわすような、無骨で大らかなのんびりした顔。俺とは違う、大将の顔。
「ど、どうしたトシ。そんなこと改まって口にされると、なんだか照れるじゃないか」
頭に手をやり日に焼けた頬を薄赤く染めて笑う近藤さんの顔に、俺は何度救われたか知れねえ。


<3>へ続く
スポンサーサイト
管理者にだけ表示を許可する

TrackBackURL
→ http://360x2.blog72.fc2.com/tb.php/268-185c63d8


Template by まるぼろらいと
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。