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2010.01.11 Mon
絵の権利は
「読書とジャンプ」のむらきかずはさんにあります。


私に権利がありませんので、よろしくお願いします。

この話の<2>のラストの塗り絵をなさったのはサクラバコの浅野 ハコさんです。
タイトルは私の色塗りですが、いずれも権利はむらきかずはさんにあります

それから、続きを読む以降は私の書いた話です。
銀魂の世界観を基にしておりますが、公式なものではまったくないので、覚悟を決めてどうぞ。
前に書いた「暮れ六つ」の次の話となっておりますので、「暮れ六つ」<1><2>を読んでからのほうが分かりやすいかと思われます。まあ、読んでいられねーって人のために書いておくと、松陽先生の家にやってきた次の日の仔銀ちゃんの話です。

結構長いので、二つに分けました。
こちらは<2>となりますので、<1>を先に呼んだほうが無難です。
楽しんでいただければ幸いです。



八つ時

<2>


次の日、昼飯を食べ終えてずいぶん経つ頃、台所で女を手伝っているとふいに女が大声をあげた。
「あら先生、珍しい。中座なさるなんて。」
「いいものをいただいたのでね」
にこにことしながら台所に男が入ってきた。両手に抱えていた、白いふきんをかけたざるを机の上に置いた。
辺りに甘酸っぱいいい匂いが漂って、オレはそうっと布巾をめくる。
中にはよく熟れて赤い小さな苺が山盛りに入っていた。
季節終わりの、オレの親指の先ほどの小さな小さなたくさんの苺。

「うわぁ…」

思わず声が出る。
村の畑から何度かかっぱらって食ったことがある。
山ん中の蛇苺なんかじゃねえ、本物の苺だ。
甘くてちょっとすっぱくて、それが目の前のざるの中にこんなにたくさんあるってことが、なんだかわくわくする。

早速一粒つまみあげ、男は口に放り込んだ。
「このまんま食べてももちろんおいしいんですが、ね。」

そう言うと、深い皿を自分で三つ持ってきて、一つの皿の中に苺をいくつか入れた。
「砂糖と」
そう言いながら、今度は砂糖壷からさじで砂糖をすくい、苺にぱらぱら振掛ける。
「牛乳」
そして置いてあった壷の中の、白い液体を上から注いだ。

「おい、苺に何すんだ!」
思わず叫んでしまった。
「何だ、その白いの。苺が台無しじゃねえか。」
男はにっこりとして「牛の乳です」と、とんでもねえことを言いやがった。

「ふざけんな、そんなもん飲んだら牛にならあ。オレは飲まねえからな。」
「人は人の乳を飲んだから人になるんじゃあ、ありませんよ。これを何度も飲んでるんですが、私はまだ牛になってないでしょう?」
破顔しながら角を探せとばかりに、男は頭をこちらへ向ける。
「人でも牛でも、乳は滋養が豊富だから健やかに育つ助けになる。」
そう言って、今度はさじを手にした。

こいつのすることは全くよく分からねえ。
苺は苺だけで食うもんだ。

男が白い牛乳の中の苺の上にさじを載せ、ぎゅうっと押しつぶすと苺がつぶれて、真っ白な牛乳を桃色に染めた。
「すげえ。」
気がつかねえうちに、オレから言葉がこぼれた。
辺りに漂っている苺の匂いがふわりと強くなって、ドキドキする。
「すげえ、面白え。」

「さあ」
笑いかけられながら男に促されて、渡された深い皿に苺を手掴みで山盛りにする。
砂糖をたくさん振掛けると、苺の上できらきらして雪山のようにきれいだ。
牛乳を入れるのにちょっとためらって、男の顔を見るとオレを見てにっこりと頷いた。牛乳を入れ、さじでこわごわとつぶす。
次々とつぶれた苺で染まった赤が増えていくごとに、楽しくなってつぶすことに勢いがついた。
時々、加減が分からずいくつかの苺が皿から飛び出した。その度に、不思議とおかしくなって笑っちまう。オレの笑い声にのっかるように男も女も声を立てて笑っていた。

山盛りになっていた苺は見る間に全部皿の中でつぶれてひしゃげてしまって、真っ白だった牛乳がかなり赤く染まった。
オレのことを目を細めて見ながら、男はさじで自分の皿の中のつぶれた苺と牛乳を一緒にすくい、口の中に入れた。

「うめえ」

男が本当に旨そうに言うので、オレもさじですくって口の中に入れた。

「…甘え。すっげえ、甘え。」

もう一口。
もう一口。

次々に口の中に入る苺と牛乳は、盗み食いした苺と違う味がした。
口の中からでる息も言葉も苺の甘い匂いがする。体ん中が甘い甘い苺になった気がする。
「こんなうめえもん、初めて食った。」
思わずもらした呟きに、男の表情が柔らかく緩んだ。
「苺の季節になったら、また一緒に何度でも食べられますよ」
食うのに夢中のオレは、その言葉に何も考えずに素直に頷いた。


「ねえ、君の名前を本当に私がつけてもいいんですか?」
おかわりをした皿が空になる頃、男が言った。
「苺なんて名前じゃなきゃな。」
名残惜しくて、さじを口に入れたままでオレがそう答えると、愉快そうに大声で男が笑った。

「銀時、坂田銀時というのはどうだろう。」
そう言いながら、目尻の皺を深くする。
「へんてこな名前ぇだな。くすぐってえ。」
くすくす笑いながらさじを齧ると、
「あらあ、先生。金太郎さんにあやかったんですね、そうでしょう?」
黙って様子を見ていた女が、オレの顔を見ながら声をあげた。
女の言ってることが分からなくて、二人の顔を交互に見比べる。
「よく分かったね、そう金太郎だよ。強そうだろう?」
「きんたろー…」
「そうですよう、金太郎さん。」
そう言うと女は席を立って、何かを持っていそいそと戻ってきた。

持ってきたのは絵の入った子供向けの本で、子供がクマと相撲をとっている絵が描かれてる。
「坊っちゃん、これが金太郎ですよ。強くて立派なお侍になるんですよね、先生。」
「侍?オレに侍の名なんて必要ねえじゃねえか、立派な名なんていらねえよ。」
本の中のおかっぱ頭のガキになるのも、赤い腹掛けするのもまっぴらごめんだ。
「まあ、なんでそんなことを。」
開いた本を見ながら、目をぱちぱちとしばたたかせながら女が言った。

だって、当たり前じゃねえか。
「オレぁ、下男だろう。下男に侍の名付けるなんざ、てんでおかしいだろ。」
男はきょとんとした顔をして、こらえきれないように少し笑った。
オレは馬鹿にされたと思うと悔しくて、大声を張り上げた。
「何で笑うんだよ。だって、そうだろ?違うのかよ、下男でなら使ってくれるんじゃねえのかよ。だからオレに飯食わしたんだろう?」
男の顔をじっとにらみつけるが、静かな目で揺るぐこともなく受けとめられた。
「お清さんが下男にするって言ったのかい?そんなこと言うわけないと思うが、ね。」
女の方を向くと、女が何度もうなずいて膨れながら怒ったような目でオレを見てる。せっかくオレに良くしてくれたのに申し訳なくて、その目を見てると胸が苦しくなった。
「間違っても言いませんよ!私は。なんでそんなこと言わなきゃならないんです。」
女は前掛けを手もみしながら、身を乗り出して男に抗議した。
「この人はなんも言っちゃいねえよ。オレが、勝手にそう思っただけだ。」
女から目をそらして小声でつぶやくと、胸の奥がちりちりして鼻の頭が痛くなる。

「だって、変じゃねえか。こんな小汚えガキ、風呂入れて、飯食わせて、布団で眠らせて。オレなんてなんの役にもたてねえ、ただのガキだ。下働きにでもする気もねえなら、どうしてここに連れてきたんだ。」

手前ぇの価値は手前ぇが一番分かってる。
オレは、なんにもねえクソガキだ。
本当は下男すらなれねえ、鍋の出汁にすることすらできねえような痩せっこけたガキだ。

「お前ぇも他のやつらみてえに、二日、三日、物珍しさの気紛れに犬や猫にでもエサやるような心積もりだったのかよ。」

居てもいいって言われたわけじゃねえのに、他のやつとは違うって、こいつは違うって勝手に思ってた。
男の顔をまっすぐに見る勇気も持てず、頭の端っこから浮かんでくる悪い考えを必死に消す。

「使ってくれるわけでもねえなら、用なんかねえなら、どうしてオレはここに居るんだ。」
胸ん中と裏腹な言葉が口から次々と勝手に出て、本当の気持ちが胸を叩いて行き場所を探してる。

ここに居てえ
ここに居てえ
ここに居てえ

「どうして、どうしてオレがここに居るんだよ!」

大声で叫ぶように口にした瞬間、しまったと思った。男にとっての本当のことを、答えを聞くのが何より恐かった。
一番聞きたくて、聞きたくない答え。
もう一度、口の中へ言葉を戻してしまいてえ。耳を塞いでおきてえ。
身じろぎする音でさえ夢から覚めてあの場所に戻りそうで何もできず、息をする音すらたてるのが恐かった。

「どうして、君がここに居るのか。」

男はなんでもないことのように、変わらずに静かな声で切り出した。
「その答えが分かったら、私に教えちゃくれませんか。」
恐る恐る顔を見ると、おだやかなまなざしがオレを見つめていた。
「その答えが分かるまで、ここに居ちゃあくれませんか。君が、いずれ下男になっても侍になっても構いやしません。ただ、その答えを私に教えてください。」
男の声がするすると真直ぐに入って、耳の中からじんわりと広がっていく。

口に浮かべた笑みと同じように笑っている目。
それを見ていると、力が抜けた。
ゆるゆると息を吐いて、オレはここにいていいんだ、と何故だか思えた。


「坂田、銀時。君にぴったりの名だと、私は思いますがねえ。銀時、そう呼んでは嫌ですか?」
苺をまた二粒口に入れて、のんびりした口調で尋ねられた。
ぶんぶんと音が立ちそうなほど勢いよく首を横に振る。

「まあ、先生。じゃあ、この子は今から坂田銀時さんですね。銀ちゃまって、呼ぼうかしら。」
女が手を叩きながら喜ぶその台詞で、我に返るとにわかに顔が熱くなる。
「ぎ、銀ちゃまなんて、駄目だ。」
「あらまあ、かわいらしいのに。お嫌ですか、銀ちゃま。」
そっぽを向いたオレの顔を覗き込むようにして、面白がってやがる。
「そ、そ、そんな名で呼んだら、絶対ぇ、返事しねえ。」
「まあ、銀ちゃま、つれないことを。」
女は芝居がかって身をよじらせて、オレにぱちぱちと目配せなんてしやがった。

気がつくと、そんなオレたちのやり取りに男が腹を抱えて笑っていた。
「お清さんもそのくらいにしておやりなさい。男の子は小さくても男の子、ですよ。」
「はあい、先生。」
女は男の言うことには素直に返事をして、オレにむかってぺろりと舌をだして、いたずらが見つかったみたいに首をすくめた。

「銀時。これからは、お清さんのこともちゃんと名前で呼びなさい。」
「はい。」
男の言葉にオレはこくりとうなずいた。

「まあ、いいお返事。じゃあ、先生のこともちゃんと松陽先生とお呼びしなくちゃダメですよ。」
女、お清さんがそう言いながらにこにこしてオレの目を見た。
「ほら、お呼びして。」

「しょ、しょうよう、せんせい。」
口から出た声は自分でもびっくりするほど小さくて、口にしたとたんに体がざわざわ落ちつかねえ。口ん中で音にするたび、一文字ずつ小さく跳ねた。出てくる言葉がうんと掠れて、オレの声じゃねえみたいだ。
「もっと大きな声で、松陽先生!」
「しょう、よう、せんせい。」
「小さい、小さい。もっともっと」と何度もお清さんに急き立てられて答えるうちに頭ん中がかあっとして、わけが分からなくなった。

「松陽先生!」

やけくそ気味に張り上げたオレの大声に、



「はい。」

静かに、その人は答えた。





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