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2010.01.11 Mon
絵の権利は
「読書とジャンプ」のむらきかずはさんにあります。


私に権利がありませんので、よろしくお願いします。

この話の<2>のラストの塗り絵をなさったのはサクラバコの浅野 ハコさんです。
タイトルは私の色塗りですが、いずれも権利はむらきかずはさんにあります

それから、続きを読む以降は私の書いた話です。
銀魂の世界観を基にしておりますが、公式なものではまったくないので、覚悟を決めてどうぞ。
前に書いた「暮れ六つ」の次の話となっておりますので、「暮れ六つ」<1><2>を読んでからのほうが分かりやすいかと思われます。まあ、読んでいられねーって人のために書いておくと、松陽先生の家にやってきた次の日の仔銀ちゃんの話です。

結構長いので、二つに分けました。
こちらは<1>となります。
楽しんでいただければ幸いです。



八つ時


<1>



目が覚めると畳の上だった。

部屋の中には誰もいねえ。
腹の端にかろうじて掛け布団がひっかかり、敷布団は敷いてもらったままの状態で遠くにある。枕はなぜだか足もとに転がっていた。
畳の端が擦り切れて障子が陽に焼けているのを見て、金がなさそうな家だと、ふと思う。

ここは、いったいどこだったっけ。

大あくびを三つして、頭に手をやると昨日の続きがふわふわしてる。
そうっと障子を開けると、おひさんが高え。
ずいぶんと寝ちまったなとぼんやり考えて、はっと気がついてケツに手をやった。
よかった。漏らしちゃいねえ。

目が覚めずに明るくなるまで寝たのは初めてだ。途端にションベンがしたくなる。
庭でするわけにはいかねえしなあ。
飯食わしてもらって庭木にションベンかけるなんて、犬か猫みたいなまねはさすがにできねえ。
襖を開けて、仕方なく人の気配を探した。
のんびり歩いた先の先で音がして、下手くそだが楽しそうな鼻歌が聞こえてくる。

廊下の突き当たりの戸をがらりと開けると、土間で昨日の女が向こうを向いてでっかいケツを振りながら台所仕事をしていた。
いい匂いがあたりに漂っていて、オレの腹がにわかに騒がしくなる。
歌いながらくるりとこちらへ振り向いた女と目があって、とっさにそっぽを向いた。

「あら、坊っちゃん。」
そう言いながら近寄ってきて、オレの顔をじっとのぞき込みながら頭に手をやり、二三度撫でやがった。
ガキ扱いに腹が立つが、にこにこした女の手を払う気にはどうしてだかなれねえ。
あんまりじいっと見られたあげくに坊っちゃんなんて呼ばれ方されて、段々と恥ずかしくなって顎が体にくっつくほど下を向いた。
「おなかが減ったろう、支度したらご飯にしようかね。」
そう言いながら、がさがさとして厚みのある大きな手でオレの手を引いて、洗面と着替えをさせた。

居間に戻るとすぐに朝飯になった。
麦の混じった飯を山盛りに盛ってもらい、あっためなおしてくれたみそ汁と蕪の浅漬けをお膳の上で食べる。

うめえ。

昨日、腹が痛くなるほど食ったけど、昨日よりも食えそうだ。
夢中になってかきこんで三度目のおかわりを差し出すと、女としっかり目があった。
「そんなに小さい体のどこに入るんだろうねえ…」
お櫃の前でしゃもじ片手に驚いたような女の口調ではっとする。

しまった、こんなに食っちゃいけなかったんだ。

居住まいを正して、身を小さくして下を向くと、途端にはじけるような声で女が笑った。
びっくりして顔を上げると、さっきよりも飯をうずたかく盛ってオレに差し出した。
「すまないね、そんなつもりで言ったんじゃないのさ。子供は食べるのが仕事なんだから、たんとお上がりな。夕べも今朝も坊っちゃんはおいしそうに食べてくれるから、作ったこっちもうれしいのさ。」

どうしてこのオレに、汚ねえガキのオレに、昨日会ったばかりの赤の他人のオレに、そんな顔でこんなことを言うんだろう。
期待しそうになるのを止めて一杯目以上に素早くかきこんでみせて、ごちそうさまを告げると「いいのかい?」と優しく聞かれた。
自分のお膳を運んで台所へ女と行くと、泥がついたまま積まれた野菜が目に入った。
何の気なしにじいっとそれを見ていると、「そうだ、坊っちゃん手伝っておくれ。」ざるを抱えて女が言った。

女に頼まれた通りに、ジャガイモをいくつか井戸端で洗っているうちに合点がついた。
そうか、下働きの下男ってことか。今の世の中、赤の他人にただ飯を食わせるやつなんていねえ。
下男としてなら使ってくれる気があるって事か、二,三日様子を見て働き次第で、ここにいていいって事か。
ようやく合点がついてほっとして、ジャガイモを手から落としそうになった。

いいところを見せなきゃいけねえ、下男として使えるってところを見せなきゃならねえ。

たわしで必死に洗っていると女がやってきて、隣に座った。
下を向いたまま、算段ばかりで夢中になっている素振りのオレの頭にぽんと手を乗せ、
「お蚕さんの糸みたいなきれいな髪だねえ。陽に透けると、家ン中で見ているよりきらきらして本当に見事だねえ。」
と、オレの白い頭を撫でながら言う。
馬鹿にされてるのかと腹を立てて見上げると、笑いじわのよったやさしい色をした女の目が真直ぐこちらを向いていて、物珍しさもお情けも混じっていねえ迷いのない視線が痛かった。かっとなった自分が急に恥ずかしくなって下を向いた。

真っ当にほめられるなんて初めてで、真ん中ぎゅっうとつかまれたみてえで。
こんなときは、どうすりゃいいんだ。笑えばいいのか、お礼でも言った方がいいのか、なんにも思いつかねえ。
どうすりゃ、かっとなってすまねえって、そんなつもりじゃなかったって伝わるんだ。

せめてなにか言おうと顔を上げると、女はジャガイモを洗うのにもう夢中だった。
しゃがみこんでせっせとあかぎれの手を動かし続けている女に、オレは何も言えなくなった。一緒になってジャガイモを洗うしか、能がなかった。

村外れにあった道端の地蔵さんのように柔らかな線を描く目で、初めからまっすぐオレの目を見たのは、今まであの男とこの女だけだった。


陽が沈む頃、男が戻ってきた。
女と玄関で出迎えたオレを見て、すぐに微笑んだ。
その顔で、今晩もまだここにいていいんだってことがオレは分かった。
男と居間で夕飯を食べているときも、男と女の両方に笑顔のまま何度もじっと見つめられて、どうしていいか分からずに下をむいた。おかげで、鰯の丸干しを焼いたのと何度も目が合った。

ここに来てから、オレは変だ。何度も下を向いてる。
村のやつらにとっ捕まっても、目ぇそらしたことなんてなかったのに。誰が相手でもメンチ切るのに負けたことなんてなかったのに。笑いながらオレを見る二人と目があうと、目ぇ見ちゃいられねえ。
どこを見ていいんだか、どうしていいんだか、何を言えばいいんだか分からなくなる。

「ねえ、先生。」
給仕しながら、季節はずれの暑さしのぎにオレ達に団扇で風を送っている女が、「今日一日中、気になって仕方がないんですが」と続けて訊ねた。
「この坊っちゃんのこと、あたしはなんて呼べばいんですかねえ。」
女ののんびりした口調にあわせたかのように、男はゆっくり箸をおろした。

「君は、何と呼ばれたい?」
男が自分で答えることなくオレへ問いかけたことにびっくりして、思わず顔を見た。
「よ、呼ばれたい?」
オレは男の言葉を鸚鵡返しにする。

「そう。何と、呼ばれたい?」

考えたこともなかった。
オレに声をかけるヤツだってほとんどいなかったし、いたってすぐにどこかへ行ってしまうか怒鳴られるためかのどっちかで、人とほとんど話らしい話をしたことがなかった。

黙って考え込んでいるオレを見て、
「坊っちゃん、なんて呼ばれていなさったんですかい。」
今度は、女がオレに問うた。
「ガキとか、てめえとか、天人の落とし子とか、鬼、とか…」
言葉の最後は口の中で、自分で消した。
ろくな言われ方してねえなと、自分でも思う。こんな言われ方しかされねえオレを、女がどういう目で見ているんだろうと思うと、そっちを向けなかった。

「まあっ、子供に鬼だなんてどこの誰が。」
女はオレの為に憤慨してくれたが、仕方がねえって分かっていた。周りのヤツがそう思う、それだけのことしかやっちゃいねえんだ。

「名前は?」
「ねえ。覚えちゃいねえ。」
男の問いかけに躊躇なく返したオレの言葉に、女の団扇が一瞬ゆっくり遅くなったことに気がついた。
それでも、女がオレに向けて風を送り続けてくれていることが、うれしかった。

「ねえ、先生。これから先も坊っちゃんじゃ、あたし困ります。この坊っちゃんは他の坊っちゃんと違うんですから、あたしが何と呼べばいいか教えてくださいな。」
女の口調は変わらずにのんびりしていて、まるでオレのことを話しているんじゃないような気がした。
「ふふふっ。お清さんらしいね。」
男は笑うとこっちを見て、もう一度「何と呼ばれたい?」と真面目な顔でオレに訊ねた。

「思いつかねえ。」

なんと言っていいか分からずに、本当のことを口にした。
誰かにちゃんとした呼び名で呼ばれるなんて、そういうことがあるなんて考えたことがなかった。
オレはオレにとっては「オレ」で、他人にとっては「こいつ」とか「あいつ」とかそんなもんで上出来じゃねえのか。面を見て、「おい」って呼べば十分じゃねえのか。

「好きに呼んでくれりゃあ、それでいい。」
本気でそう言うと、
「では、及ばずながら考えてみましょうか。」
男はそう言って再び箸を手に取り、冷えてしまった飯をおいしそうに口に運んだ。



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